2月のお薦め映画 

〇アメリカン・ハッスル(米) 138分

今年度アカデミー賞最多の10部門でノミネートされている作品です。
私は、大変感銘を受けましたが、どうも日本での反応は、いまひとつのようで、公開もそろそろ打ち切りになりそうな気配ですので、ご紹介だけさせて頂きます。

意味不明な題名ですが、この映画は、1979年にFBIのオトリ捜査によって多数の政治家が逮捕されたという実話(「アブスキャム事件」)を題材にした作品で、「ハッスル」というのは詐欺という意味だそうです。
1976年のニューヨーク。詐欺師のマーヴィン(クリスチャン・ベール)と、そのビジネスパートナーで愛人のシドニー(エイミー・アダムズ)は、融資詐欺の罪でFBIのリッチー(ブラッドリー・クーパー)に検挙されますが、捜査に協力する事を条件に釈放されます。それはオトリ捜査で、善良な市長(ジェレミー・レナー)を、FBIが罠を仕掛けて賄賂を受け取らせるという、でっちあげの収賄事件でした…。

この映画を、新聞広告では、詐欺師を主人公にしたコミカルな(『スティング』のような)犯罪映画であるかのような宣伝をしていますが、そのつもりで見に行くと多分がっかりすると思います。確かにストーリー的には犯罪ドラマですが、実際的には、アメリカ社会の底辺で懸命に這い上がろうとしている人間達をコミカルに描いた「人間ドラマ」であり、ある意味では、ロマンチックな恋愛映画でもあります。
同じ監督の、前作『世界でひとつのプレイブック』(昨年度アカデミー賞8部門でノミネート。ジェニファー・ローレンスが主演女優賞受賞)は、精神を病んだ男女の再生物語でしたが、この作品も、嘘の世界で生きてきた男女が、自分の生き方を見つけるまでを描いた再生の物語です。

1970年代のファッションや風俗、そして全編に散りばめられた1970年代のヒット曲がなつかしく、とても楽しいのですが、何よりも見どころは、俳優たちの演技です。
主要登場人物4人全員がアカデミー賞にノミネートされています。
主人公の詐欺師マーヴィンを演じたクリスチャン・ベール(バットマン役で有名)は、何十キロも体重を増やしての役作り。その肥満体にびっくりさせられます。愛人役のエイミー・アダムスは、前作『人生の特等席』でクリント・イーストウッドの清楚な娘役だったのが信じられないような元ストリッパーの派手女で登場。すぐれた知性と感性を持ちながら、まっとうに生きられない女の哀しみを見事に演じています。
そしてまた凄いのが、2年連続のオスカーを狙うジェニファー・ローレンス。主人公の本妻の役で、ド派手で情緒不安定なぶっ飛んだ主婦ですが、これがまた絶妙に上手い。夫の愛人と遭遇するシーンは本当に怖いです。

米国人による米国人の為の映画ですから、外国人(日本人)には、その習俗など、よくわからないところが多々あるのですが(例えて言えば『東京物語』を米国人が見ているような感じ)、しかし、そこに描かれる人間ドラマは世界共通ですから、その部分に共感できれば楽しめると思います。
いずれにいたしましても、万人受けする映画ではないので、万人にはお薦めしませんが、前作『世界でひとつのプレイブック』に感銘した方、1970年代の音楽が好きな方、またサリンジャーなどのアメリカ現代文学がお好きな方にはお薦めできると思います。                 (私の採点は、今年度最高の93点)

[昭和55年文卒 上田則夫]





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