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10月のお薦め映画 

今月は3本(①蜩の記、②ジャージー・ボーイズ、③舞妓はレディー)、ご紹介させていただきます。

〇蜩の記(邦画)2時間9分

 格調の高い静謐な時代劇です。秀作だと思います。
 檀野庄三郎(岡田准一)は、家老(串田和美)より、農村に家族とともに幽閉されている戸田秋谷(役所広司)の監視を命じられます。秋谷は、側室との不義密通の罪により切腹する身ですが、藩史(家譜)編纂の仕事も課せられ、その完了まで10年間の猶予が与えられています。残りはあと3年。もし逃亡を企てれば、妻子ともども斬り殺せとの指令。しかし、庄三郎は、秋谷の高潔な人柄やその生き方に接し、冤罪を確信。事件の真相を探りはじめます。

 原作は葉山麟の直木賞受賞作。その事件の顛末は、痛快な場面や小気味よい殺陣もおりこんで、上手に映像化しておりますが、この映画の一番の見どころは、主人公の戸田秋谷(役所広司が好演)の余命3年の生き方であり、そしてその映像表現だと思います。カメラは、日々を大切に生きる秋谷の心情に寄り添い、農村での生活や、美しい四季の移ろい、行事、そして家族の団らんなどを、とても端正な映像でじっくりと描いています。音楽(加古隆)も美しいです。

 監督、脚本は、黒澤明監督の助監督を務めた小泉堯史。撮影、照明、美術、衣装等もかつての黒澤組スタッフ。俳優陣も立ち振る舞い美しく、プロの技術が総合的に凝縮した画面の緊張感は、まさに黒澤映画を彷彿させます。
 少々生真面目すぎるきらいはありますが、まさに「鑑賞する」という言葉がふさわしい作品だと思います。 
                       (私の採点は85点)

〇ジャージー・ボーイズ(米)2時間14分

 クリント・イーストウッド(なんと84歳)の33作目の監督作品。舞台ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の映画化です。1962年に『シェリー』の大ヒットでデビューした「ザ・フォー・シーズンズ」の成功と挫折、そして復活までの軌跡を、60年代、70年代のヒット曲をたっぷり盛り込んで描いています。老監督とは思えない軽やかで斬新な演出と、老監督ならではの人生を見つめる滋味が上手に配合されて、とても味わい深い大人の音楽映画になっています。秀作です。

 1951年のニュージャージー州、イタリア移民が多い貧しい町で、理容店の下働きをしている、16歳のフランキー・ヴァリは、天性の歌声で、マフィアのボスにも可愛がられていました。年上の遊び仲間は札付きの不良達。マフィアかボクサーか歌手になるしか成功の道はないといわれる田舎町で、彼らは、バンドを組んで音楽の道を歩み始めます。

 映画は4つのパートに分かれており、グループ結成までの「春」、スター街道を邁進する「夏」、グループの危機を迎える「秋」、そして苦難の「冬」と進行し、パートごとに、メンバーのひとりが観客に向かって状況を説明するという変わった趣向になっています。舞台版の俳優をそのまま起用したそうで、なじみのない俳優ばかりですので、特に前半は、人間関係が分かりにくく少々困惑するかもしれません。
 ともあれ、全編を彩るザ・フォー・シーズンズのヒット曲が魅力の映画です。ファンは必見でしょう。蛇足ですが、ラストのミュージカルシーンもお楽しみに。私はこのシーンだけでもこの映画を見る価値はあると思いました。
                          (私の採点は87点)

〇舞妓はレディー(邦画)2時間15分

 周防正行監督(『Shall Weダンス』、『しこふんじゃった』)久々の娯楽映画。今回は舞妓さん、京都の花街(かがい)がテーマです。
邦画では珍しい本格的なミュージカル映画(全12曲)です。日本家屋での歌や踊りは相当奇妙で不自然なのですが、慣れてしまえば大丈夫。心がほっこりするような明るく楽しい作品です。

 題名は、お気づきのとおり名作『マイ・フェア・レディー』のもじりです。田舎から出てきた花売り娘のイライザ(オードリーヘップバーン)を、言語学者のヒギンズ教授がレディーに仕立て上げるというミュージカル映画でしたが、こちらは、舞台を京都に移して、舞妓になりたいと青森から出てきた田舎娘(なんと津軽弁と鹿児島弁のバイリンガル)(上白石萌音が好演)を、言語学者(長谷川博己)が京都弁をマスターさせ、舞妓に仕立てるというストーリー。設定はパクリですが、内容的には、ラブロマンスというより、純朴な少女が花街の人々に支えられて舞妓をめざすという成長物語になっています。
主役を演じる新人女優「上白石萌音」が大変魅力的です。いまどきの女優さんには珍しく小柄でずんぐり体型なのですが、素朴でひたむきで可愛らしく、歌も踊りも上手。そして妙な存在感があって、富司純子、草刈民代、田畑智子、竹中直人等々の豪華脇役にけっして負けていません。スター誕生かもしれません。

 ストーリーは他愛のないものですが、1960年代の東宝喜劇映画や、テレビバラエティー(シャボン玉ホリデー等)に通じるような、知的で粋な遊び心があり、また京都花街での、着物や所作の美しさもたっぷり盛り込んで、とても良く出来た大人の娯楽映画だと思います。特に花街に親しんだ殿方は楽しめるのではないでしょうか。
ラストは、ミュージカル映画のお約束、皆で歌って踊っての大団円。上白石萌音が舞妓姿で、ふなっしーばりのキレの良いダンスを披露してくれます。
                   (私の採点は90点)

               [昭和55年文学部卒 上田則夫]





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